ホールディングスは事業を行なうものではない
四季報など会社紹介や業界研究をする記事を読んでいると、かなりの割合で「HD(ホールディングス)」という名称を見かけます。
「キリンホールディングス」や「ベネッセホールディングス」「SBIホールディングス」などといったものが代表例と言えるでしょう。
キリンを例にすれば、もともとキリンという会社はビールやその他の飲料を製造販売する会社です。
しかしその他にも海外での総合飲料の販売や、医療・バイオケミカルも行う多角経営をしている会社でもあります。
日本において飲料水を製造販売しているのは「キリン株式会社」です。
ビールに関しては「キリンビール株式会社」、ワインは「メルシャン株式会社」といったように、事業内容により複数の企業が設立されています。
「キリンホールディングス株式会社」というのはそうしたキリンのグループ会社を持ち株にした、いわば大きな輪の中心となっている企業のことです。
子会社の株式の大半を所有することにより、会社の経理や大きな経営方針の決定をしていくことができるようになっています。
いわゆる親会社・子会社の関係とは少し異なっており、「ホールディングス」となっている企業は事業それ自体は行なっていないというところに特長があります。
別名で「純粋持株会社」と言われることもあり、「○○ホールディングス」という会社は全て事業そのものを何かしているわけではありません。
キリンの例でいえば、ビールを作ったり販売したりといったことは子会社となるキリンビール株式会社の事業であり、キリンホールディングス株式会社はあくまでもそれを管理統括する立場となります。
ホールディングスのメリット・デメリット
ものを作ったり売ったりということをしないホールディングをなぜわざわざ設置するかというと、その最大のメリットとして経営の効率化や迅速化ができることがあるからです。
同じグループ会社であっても、子会社同士で利益が相反することもあります。
そうした時に管理統括をする会社組織があることで、大きな意思決定を中央で行うことができ、細かい利益調整に時間をかける必要がなくなるのです。
また、ホールディングという形態をとっておくことにより、グループ全体の会計を総合的に行うことができるのもメリットです。
例えばグループ会社Aが赤字であっても、グループ会社Bが黒字であれば、その分を相殺することが可能になります。
これは節税対策にもなるので、大きな企業になるほど会計処理上でのメリットが高まるのです。
デメリットとしては子会社同士の連携がとりにくくなったり、持株会社が上場しないと子会社が上場できないといったことがありますが、比較をすると圧倒的にメリットの方が大きいと言えます。